『はじめまして、MINAKOです。―作品集の考え方―』No.001

はじめまして。吉野美奈子と申します。
NYを拠点に活動している日本人アーティストです。ブルックリンのウィリアムスバーグというアーティストたちが集まっているエリアのロフト(倉庫や工場跡地)にスタジオを構えて制作しています。日本語で紹介されるときには、画家とか、彫刻家とか、詩人などと呼ばれますが、英語ではコンセプチュアルアーティストというようなところに属し、主に「思考や概念」を伝えるためのアートを追求しています。なので、私の場合意図するメッセージが伝わるならば表現方法はなんでも良いと考えています。日本人では、オノ・ヨーコさんなどがこの道の大先輩です。そんなことも、私はNYに来るまで知りませんでしたけど(笑


10月に青山のスピカアートギャラリーで個展を開催しまして、その際に日精PRさんで彫刻作品集をつくっていただきましたのがご縁でこのたびの企画となりました。何しろ、作品集の制作は、超間際の判断でしたので、日本帰国便にのるぎりぎりまでの作業、到着翌日に色校という強行で、私のめちゃくちゃなスケジュールによくぞおつきあいくださったと日精さんには、感謝の気持ちでいっぱいです。


「NYのナマ情報をぜひ!」と言われて、うーん、どこからはじめようかな、と一瞬迷ったのですが、やはり、ここは、私とこのサイトを訪れる日本の皆さんとの共通関心事項から始めようと考えました。
私がNYのスタジオのマックでネットサーフィンしている際に、たまたま日精さんのWebサイトをみつけて、ちょうど、今の皆さんのように、作品集を創ろうかなと思ったのは、今からおよそ6週間ほど前でしょうか。(信じられない! もう遠い過去のような気がする。。。)
それで、そのころ、たまたま日本の両親と電話で話すことがあって、この話をちょっとしたら「そんな、まだ有名でもないのに! 誰も買わないぞ! 日本は有名じゃないとダメなんだから!」という、日本ではごくあたりまえの普通の反応が返ってきました。このような言葉はたいへんエネルギーを奪うものですが、これが一般的な反応なのは、私も日本育ちなので十分承知です。そして、私はずーっとこういった既成概念と戦ってきたので、やっぱりそうくるか、ぐらいの感じで、だからと言って、彼らの意見を聞こうなんて頭はさらさら無いわけです。ありがたいことに、NYにいるとさらに強くなれます(笑


私の今回の東京個展のコンセプトは「私で在ること」でした。誰に何を言われても、「自分の軸を譲らない強さ、優しさ」がテーマでした。本当にやりたいことがあったら、何かを理由にしてそれを先延ばしにしてはいけない。特に、両親がこう言ったからとか、周りが反対したからとか、それをあとで並べても、そんなものは全部いい訳で、自分が後悔するだけだと思っています。自分の軸をキープするのは自分への愛で、それがないと、他人の夢にもエールを送れません。(注:私は宗教家ではありません。単に私の哲学です)
さて、失敗することは、いけないことでしょうか? そもそも、なにが失敗なのでしょう?


同じ頃、彫刻の先生と話す機会があって作品集の話をしました。私はアートスチューデントリーグNYの彫刻のクラス(1世紀ほど前には高村光太郎さんたちが学んだところです)で、アシスタントのようなことをしています。ここに唯一の日本人インストラクターで、斎藤誠治先生という方がいらっしゃいます。先生は、半世紀ほど昔に、東京芸大に石彫課ができたときの1期生で、かつてイサムノグチさんの助手などもつとめられましたが、メインはロダンのような、人体の具象表現になります。
「それはいい! みなちゃん! ぜひやりなさい! 立派なものなんか、創る必要はない。できるほうがおかしいんだから!」


そう、これが「NY流」。見栄とかはらないで、体裁とか気にしないで、今、私にできる精一杯。それを受け入れてくれるNYの人たちが若い作家を育てます。私は、ほとんど何も知らないNYに一人で来たので、いつもいつも、ただただ、この街の勇気をくれる人たちに背中を押されながら、助けられながら、進んできました。自分を自分以上にみせるコネも英語力もいわゆる日本ではとても大切なバックグラウンドにあたるものも、みごとにすっかりなんにもなくて、でも、作品をみせると、この街の人たちはいつもびっくりするほど反応してくれる。そんなふうにエネルギーをいただきながら、「見えるもの」を創っていて本当に良かったと何度も何度も思いました。まさに、目の前で、ドラマチックなほど「作品が言葉を超えてゆく」のです。これが本当の「アートの力」だということを、NYが教えてくれました。


今私にできる、ありのまま。
今の私の足跡を残すということの大切さ。
ゴージャスハードカバーの解説つき、オフセット印刷で全カラー100ページとか?
そんなの待ってたら、いつになるかわからない、ですもんね。
今の足跡が残せないで、3年後とか10年後になにができるのだろう、と私は思ってます。
あなたの1冊を手にした人の明日が、
今日とはちょっと違う1日になるかもしれません。
それがどんなにどんなに素敵なことか。


エネルギーは巡回しています。
アートはその素晴らしい形です。



※バックナンバー↓
MINAKOのNYダイアリー

『はじめまして、MINAKOです。―作品集の考え方―』No.001
『NYの OPEN STUDIO』No.002
『NYの OPEN STUDIO その2』No.003
『ART BASEL in Miami Beach/世界へのアプローチ』No.004
『NYアートの洗礼』No.005
『ニューヨークアートを体験しませんか?』No.006
『NYアート留学体験参加者募集』No.007
『黒姫受賞とNYアート体験一期生』No.008
『NY流お絵描きワークショップ&サマーパーティ in 東京!のご案内』No.009
『2006/12/7 NY直輸入吉野美奈子石彫刻展(12/17~12/23)&
絵画とダンスコラボレーション“つらなり”&
111幻アートスクールワークショップ (12/17~23)in Tokyoのご案内』No.010

『幻の記憶(111アートスクールレポート)』No.011
『生きる場所(吉野美奈子個展公演レポート)』No.012
『夢見る人々に NEVER TOO LATE 』No.013
『アメリカ独立記念日 』No.014
『吉野美奈子制作奮闘ダイアリー』No.015
『「光のアリア」個展報告と「チェルシーのギャラリー」』No.016
『いろんなアートの形(yozgalleryとmottainainy) 』No.017

NYアート体験レポート

『NYアート体験レポート』No.001 石塚智寿 編
『NYアート体験レポート』No.002 よしだみおき 編
『NYアート体験レポート』No.003 加藤健太郎 編
『NYアート体験レポート』No.004 上原和江 編
『NYアート体験レポート』No.005 庄司 純 編




Biography

吉野美奈子 (画家・彫刻家・詩人)
ニューヨークを拠点に活動する
コンセプチュアル・ビジュアル・アーティスト。
吉野美奈子official website
吉野美奈子blog
2001年 渡米。 一貫して「大いなる愛・宇宙的生命のつながり」をテーマに作品を発表。絵画・彫刻ともに作風は、有機的かつ霊的。建築、音楽、舞踊をはじめ様々なアーティストのインスピレーションとなりコラボレーションに参加、その活動はNYタイムズでもとりあげられる。日本、米国をはじめ世界の各地で作品を発表。
2004年6月、米国最古の彫刻協会ナショナル・スカルプチャー・ソサエティーより 「平和のためのシリーズ」にて新人賞奨学金を受賞。
2005年3月、NY国連NGOアースソサエティ表彰式にて、舞踊家佐藤道代ととも に吉野の絵画に基づくアートプレゼンテーション「アース&ヒューマニティ」を発表。地球保護に関わる世界の知識人より喝采をあびる。
2006年黒大理石の代表作「Awaken(目覚め)」通称黒姫により、全米女性作家協会より日本人女性彫刻家として初の名誉賞を受賞。

卓越した技による独自の世界観の徹底した表現と、多方面での活躍に、NYメトロポリタン美術館、国連エクジビション部、全米具象彫刻協会、NYマルボロギャラリー、NYアートマガジン、NY市建設部等より高い推薦状を受けている。




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