『NYの OPEN STUDIO』No.002

こんにちは、吉野美奈子です。
帰国直後の恐ろしい寒さから一変して、NYは気持ちのよい秋晴れの続く今日このごろ、みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
仕事もクラスも完全に休止して、10月いっぱいは狂ったようにNYのアートを満喫しました。毎日美術館に通い、シアターも秋は楽しいNY。セントラルパークの木々がいっせいに秋の盛りを歌い始め、パーティも増えて、なんだかわくわくする季節です。急に赤ワインが飲みたくなってオペラとか観たくなってくるのは、この季節の魔法というか、なんなんでしょうかね。私の場合はなぜかいつも夏がとても忙しいので、秋にそれを発表すると、ぐたっといきなり吸収の季節にはいります。私は創るのも、鑑賞するのも大好きで、両方ないと生きてゆけない生き物のようです(笑
NYにいると、本当に様々な国のいろいろな形のアートがとても簡単に安く体験できます。フリーでみられるものもとても多いですし(それをスポンサーする企業も多いということです)、日本の映画が1,800円なら、オペラの一番安い席は26ドルからあります。こうなると、オペラだって映画感覚でみられると思いません? どんな席でもよければ当日でもだいたい何かとれますし、それなのに、開けてみると「満席」ってことがままあって、そこにNYの集客力をあらためて感じるわけです。それは、オペラでもミュージカルでも個展のオープニングでもそうですが、ここの人たちは、今日はどんな気分? いったい何が今一番面白そう? という感じでどんどん予定を変えていってしまうので、もちろん3ヶ月先の約束なんて絶対不可能! 個展の案内も1ヶ月先では早すぎで、1週間から3日前が一番効果的。日本とはこのあたりからかなりかってが違ってきます。もちろん印刷もののプレスと絡む場合は、2、3ヶ月前の締め切りなどありますが、基本は「今」が軸と言えるでしょう。


さて、今日はNYアーティストたちの秋の名物?「オープンスタジオ」をご紹介します。オープンスタジオというのは、その名のとおり、それぞれアーティストが自分のスタジオをオープンするだけのことなのですが、それがそれだけに終わらないのが、この街の素敵なところで、徹底的にお祭りにする! 音楽あり、ダンスあり、パーティありでただの絵画鑑賞では終わりません。ビジュアルアートと、パフォーマンスアートが融合して生まれてくるこのようなイベントは実に集客力があり、これは、とくにギャラリーとまだ契約のないアーティストにとって、とても素晴らしいチャンスで、まずは、ほとんど何の経費もかけないで自分の作品を多くの人たちにみてもらえること、別のジャンルのアーティストとのコラボレーションの可能性、またコミッションなしで作品の販売が可能なことなど良いことはいろいろあげられますが、逆に、ギャラリーサイドからみても、一斉に多くの作家の作品を実際に作家と話をしながらみられるわけで新人探しには絶好のチャンスと言えるでしょう。
私はこの2月まで111というアーティストビルにスタジオをもっていて、ここでの波瀾万丈な2年間はまた別の機会にお話したいと思いますが、15年間続いた111のオープンスタジオ(なんと1週末で2万人の人が動いた!)は残念ながら2004年をもって終了してしまいました。それで、寂しいなぁーと思っていたら、新しくスタジオを持ったエリアでもオープンスタジオがあるという情報を手に入れ、さっそく主催箇所the Bushwick Art Projectsに行ってみました。


しばし、日本に帰国していた私は、申し込み期限を完全に切ってしまっていましたが、どんな例外もありのNYでは、とにかく積極的にはっきりと発言することが大切。かなり高い確立で「情熱」がモノを言います。まずは、何ごとも「私はこれがやりたい!」と手をあげるところからはじまります。というわけで、流儀にのっとって、事務局にメールしました。私のスタジオがエリアの中心からはわずかに離れているので、自分のスタジオではなくて、ギャラリーや、コミュニティが提供するスペースで作品をみせられないか聞いてみました。通常、このようなイベントには、そういったスタジオを公開しない作家のための場所もキュレーターや、コーディネーターつきであるものなのです。このときに最初のメールから、必ず自分のWebサイトを添付します。言葉だけではダメなときも、作品が突破してくれることはままあるからです。「MINAKOのこの作品が置きたいから、乗ってちょうだい」というオファーは珍しくありません。Webギャラリーは、新世紀のアーティストの強い味方だと言えるでしょう。これがどんなに若いアーティストたちの可能性を広げてくれるかと言う話はまた今度ということで、話はオープンスタジオにもどります。


このたびの参加アーティストはあらゆるジャンルから120名ということで、土曜日の昼下がりからはじまり、夜通し続いて日曜日の朝8時に終了とのこと。はじめからオールナイトの予定で案内されるのもかなり珍しいような気がしますが。みんな覚悟で来てね、ってことですねぇ。NYの人はパーティ好きです(笑


さて、事務局のマリッサからメールが返ってきて、コミュニティスペースはもう空きがないということだったのですが、スタジオをオープンするアーティストの中で、MINAKOのホストをしてくれる人をさがしてみるよ、という親切な返事がもどってきました。それから、間髪おかずにベンジャミンという半立体のような作品を創る建築家アーティストからメールが届いて、「MINAKOの作品サイトでみたよ! 僕のスペースでいっしょにどう?」 期待通り! それから、私も彼の作品をサイト(Benjamin Boland氏のWebサイト)で拝見。へぇー、なるほど、なかなか素敵。それで、次の日にはスタジオにお邪魔してうちあわせ。あたりまえだけど本物の作品はもっともっと素敵でしたねぇ。空間を共有してデザインするときに、お互いの作品が好きであるということはとても大切。そうして、私はめでたくメンバーに迎えていただき、BAPのサイトにもリンクしてもらって準備万端。コミュニティのサイトを通して、知らないたくさんの人たちが作家のWebサイトを訪ねてくれることも、こういった企画に参加する大きなメリットです。そして、企画のなかで、いろんなアーティスト仲間と知り合って、また新しいことを企んだりするわけです。かつてのソーホーがそうであったように、このようなアーティストコミュニティがNY界隈にはまだいくらか残っています。


昔、日本で描いていたころに、「作家は黙って絵だけ描く」というようなことを美徳と言われた先生もいらっしゃいましたが、ここでは、自分が何をやっているのか、何を伝えようとしているのかを「きちんと発言」しなければなりません。「黙って」なんて悠長なこと言ってると、面白いことを言ってる人のところにみんな行ってしまうわけです。絵だけが上手でいいのなら、そのような人は世界にいっぱいいっぱいいます。自分の代わりにそれを言ってくれるエージェントや、ギャラリーがいればいいのかもしれないですが、そんなの待ってたら、いつになるかわからないですからね。下手な英語でも自分でちゃんと言う。


私がこのコーナーを通して、皆さんにお伝えしたいと願っていることは、現代のアート界の別の価値観と可能性です。先日帰国したときに、ちょっとお話した日本の作家さんが(彼女は20代の後半だと思いましたが)「美奈子さん、私は評論家の先生たちに媚びるためならなんでもやります」と言ったのです。そのとき、私はとてもとてもとてもとてもとてーも哀しくなって、こんな私が! 言葉を失ってしまった。「それじゃぁ、いったい、なんのためにアートやってるのか?」勿論、私は自分がとても理想主義なことはわかっていて、しかも別に特に成功しているアーティストでもないことは百も承知なのですが、しかし! しかし、しかしです。


アートというのは、個人の自由な表現の世界です。
自分の魂と精神の導きの声に従って作品を生み出してゆくわけです。
決して媚びてはいけない。と私は思う。
自分の信じる「美しいもの」にただ正直であるべきだと思う。
私は自慢じゃないですが、日本のコンペはとことんダメです。
評論家の先生も誰も知りません。
奨学金や、新人賞をこんな私にぽんとくれるのは、
私のことを私の作品以外何も知らないNYの人たちです。
誰にも媚びなくても、
世界の誰かが、貴方の作品を愛してくれたら幸せだと思いませんか。
ビジュアルアートをやっている私たちはとても恵まれていて、
これはすでに「言葉」をはじめとするあらゆる壁を超えているのです。


世界に作品をみせませんか。
方法はいくらでもあります。



これが、私の愛した「111アーティストビル」です。
2004年の「111最後のオープンスタジオ」風景です。
「ビル側の妨害」にあって、当日いきなり!「一般人の立ち入り禁止」が出ました。
それでも入館を待つ多くのアートサポーター。


ゲストが入れないなら、こっちから出て行ってやる!
とアーティストたちはたくましい。外で準備するバンド。


そうして、ゲストが入れないんだから、ビジュアルアートも外へ!
ということで「即席ギャラリー」をビル前に仮設。
ついでに、ホットドックやさんや、ムービングセールもあり?



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MINAKOのNYダイアリー

『はじめまして、MINAKOです。―作品集の考え方―』No.001
『NYの OPEN STUDIO』No.002
『NYの OPEN STUDIO その2』No.003
『ART BASEL in Miami Beach/世界へのアプローチ』No.004
『NYアートの洗礼』No.005
『ニューヨークアートを体験しませんか?』No.006
『NYアート留学体験参加者募集』No.007
『黒姫受賞とNYアート体験一期生』No.008
『NY流お絵描きワークショップ&サマーパーティ in 東京!のご案内』No.009
『2006/12/7 NY直輸入吉野美奈子石彫刻展(12/17~12/23)&
絵画とダンスコラボレーション“つらなり”&
111幻アートスクールワークショップ (12/17~23)in Tokyoのご案内』No.010

『幻の記憶(111アートスクールレポート)』No.011
『生きる場所(吉野美奈子個展公演レポート)』No.012
『夢見る人々に NEVER TOO LATE 』No.013
『アメリカ独立記念日 』No.014
『吉野美奈子制作奮闘ダイアリー』No.015
『「光のアリア」個展報告と「チェルシーのギャラリー」』No.016
『いろんなアートの形(yozgalleryとmottainainy) 』No.017

NYアート体験レポート

『NYアート体験レポート』No.001 石塚智寿 編
『NYアート体験レポート』No.002 よしだみおき 編
『NYアート体験レポート』No.003 加藤健太郎 編
『NYアート体験レポート』No.004 上原和江 編
『NYアート体験レポート』No.005 庄司 純 編




Biography

吉野美奈子 (画家・彫刻家・詩人)
ニューヨークを拠点に活動する
コンセプチュアル・ビジュアル・アーティスト。
吉野美奈子official website
吉野美奈子blog
2001年 渡米。 一貫して「大いなる愛・宇宙的生命のつながり」をテーマに作品を発表。絵画・彫刻ともに作風は、有機的かつ霊的。建築、音楽、舞踊をはじめ様々なアーティストのインスピレーションとなりコラボレーションに参加、その活動はNYタイムズでもとりあげられる。日本、米国をはじめ世界の各地で作品を発表。
2004年6月、米国最古の彫刻協会ナショナル・スカルプチャー・ソサエティーより 「平和のためのシリーズ」にて新人賞奨学金を受賞。
2005年3月、NY国連NGOアースソサエティ表彰式にて、舞踊家佐藤道代ととも に吉野の絵画に基づくアートプレゼンテーション「アース&ヒューマニティ」を発表。地球保護に関わる世界の知識人より喝采をあびる。
2006年黒大理石の代表作「Awaken(目覚め)」通称黒姫により、全米女性作家協会より日本人女性彫刻家として初の名誉賞を受賞。

卓越した技による独自の世界観の徹底した表現と、多方面での活躍に、NYメトロポリタン美術館、国連エクジビション部、全米具象彫刻協会、NYマルボロギャラリー、NYアートマガジン、NY市建設部等より高い推薦状を受けている。




Biography

吉野美奈子
(画家・彫刻家・詩人)
ニューヨークを拠点に活動する
コンセプチュアル・ビジュアル・アーティスト。

2001年 渡米。 一貫して「大いなる愛・宇宙的生命のつながり」をテーマに作品を発表。絵画・彫刻ともに作風は、有機的かつ霊的。建築、音楽、舞踊をはじめ様々なアーティストのインスピレーションとなりコラボレーションに参加、その活動はNYタイムズでもとりあげられる。日本、米国をはじめ世界の各地で作品を発表。
2004年6月、米国最古の彫刻協会ナショナル・スカルプチャー・ソサエティーより 「平和のためのシリーズ」にて新人賞奨学金を受賞。
2005年3月、NY国連NGOアースソサエティ表彰式にて、舞踊家佐藤道代ととも に吉野の絵画に基づくアートプレゼンテーション「アース&ヒューマニティ」を発表。地球保護に関わる世界の知識人より喝采をあびる。
2006年黒大理石の代表作「Awaken(目覚め)」通称黒姫により、全米女性作家協会より日本人女性彫刻家として初の名誉賞を受賞。

卓越した技による独自の世界観の徹底した表現と、多方面での活躍に、NYメトロポリタン美術館、国連エクジビション部、全米具象彫刻協会、NYマルボロギャラリー、NYアートマガジン、NY市建設部等より高い推薦状を受けている。

ハッタン57丁目のランドマークビルHearst Towerにて吉野の手がけた彫像12体(3メートル×12体)がライトアップされる。21世紀に残る仕事として、NYタイムズからも絶賛。さまざまなメディアを駆使してあらゆるステージで創り出される吉野の世界は、まさに歌のないオペラのような「視覚的体感空間」と言えるだろう。その世界は、人を自身に回帰させる「愛」というエネルギーに溢れている。

日本、米国、韓国の各地で作品を発表。2004年、米国最古の彫刻協会ナショナルスカルプチャーソサエティーより「平和のためのシリーズ」にて新人賞受賞。2005年、国連NGOアース・ソサエティ表彰式(NY国連プラザホテル)にて、吉野の絵画と詩「アース&ヒューマニティー」に基づくミクストメディアプレゼンテーションを発表。地球保護にかかわる世界の知識人たちより喝采をあびる。




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