『NYアートの洗礼』No.005

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。吉野美奈子です。
もうチャイニーズニューイヤーですね。
2006年今年の日本は寒いと聞いていますが、みなさま、いかがお過ごしでしょうか。NYは暖冬です。おかげさまでとても助かっています。
前回までの4回にわたってなんだかんだと書いてみたのですが、あまりにも反響がないので、ちょっとサボりました。はは。というか、締め切りや、ギャラリー搬入があって、ちょっと立て込んでいました。が。しかし、実際、人間、「打てば響く」というテンポで物ごとが運ぶと拍車がかかるものです。多くのアーティストが世界からこの街NYを目指してくるのは、ひとつに、その反響のダイレクトさにあります。良きにつけ悪しきにつけ、NYでは待った無しで反応がでます。私がNYを離れられない理由は、おそらくそんなところにあるんだろうと感じます。


2001年7月。私はNYスクールオブビジュアルアートの夏期生でした。 何もわからないで渡米しました。木炭と練りゴムと電子辞書以外、ほとんど何も持っていませんでした。でも、2号ぐらいのサイズのポートフォーリオを持っていて、いつもそれを持ち歩いていました。自分のアートを言葉(英語)で説明できなかったからです。
ある日、SVAからリーグに移動するため、地下鉄に乗ると、黒人の子供たちが軽快なリズムと共にアクロバット級のパフォーマンスを披露していました。ダンスの間にハンドルを使って天井を蹴り上げて1回転、2回転! う、上手い! それを、ほんの5歳ぐらいの男の子がやってのけちゃうんだから、シルクドソレイユもびっくり。車内でのパフォーマンスは違法ですから、電車の移動中のほんの2分ほどのあいだにみせられたパフォーマンスでしたが、終了と同時に車内は大喝采で、「ブラボー!」「ブラボー!」の嵐。この5歳児と中学生の3人組へのドネイションは、当然あっという間に集まって、数分の間に「数10ドル」を稼いでいきました。素晴らしい!


隣の席の男の人が、 「いやぁ〜、今のよかったよねぇ、僕もアーティストなんだ」と言うのでつい、
「何をやるの?」と聞いたら、
「ギターリスト。君は?」とすかさず訪ねるので、
「私はビジュアルアーティスト、絵描きなの」と答えると、
「へぇ〜、どんな絵を描くの?」と聞くので、私は心の中で
(うわ。やっぱり来た、苦手な質問)と思って、
「説明できないけど、うんと、写真があるよ」と言うと、
「みせて、みせて!」とおっしゃる。
(まさか地下鉄の中でもか?)と思いながら、例の小さなポートフォーリオをみせると、
彼が超おもむろにびっくりして小さなポートフォーリオにかぶりつきながら
「うわぁ! すごい! すごい!」と大声をあげるものだから、
私の方もびっくりしてしまって、さらに、ここからがもう一つびっくりなんだけど、
地下鉄車内の私達の周りに座っていた人々が
「え? 何? 何? 何? 私にもみせて、みせて!」ってよってきて、
(え? ほんと?)って疑う間もなく、
次の瞬間、私はにわかに人だかりの真ん中にいて、
「うわぁー、すごい! 奇麗! こんな絵みたことないよ」
「君が描いたの? いつ描いたの?」
「神秘的で、スピリチュアルねぇ」
「東洋的なのか、宇宙的なのか、パワフルだなぁ」
「いったい、どんなコンセプトなんだ?」
「美しいエネルギーを見せてくれて、ありがとう」とか
とにかくなんだか大騒ぎになってしまって
日本からひょっこりやってきた小さな私は、いきなり地下鉄の中でスーパースターみたいになっちゃって(スーパースターは地下鉄には乗らないけど)
こんな私でも圧倒されてしまいました(笑

この、手応え。


作品をみて、感動したということを、すぐに言葉にして伝えてくれる人たち。
そこから純粋に溢れるように私に流れ込むエネルギー。そこに存在する意識の交換。
それは「種の記憶」という絵でした。しばらく私のWebサイトのトップに使った絵でしたが、とにかく、他のどこでもなく、この地下鉄の車内で私はNYアートの洗礼を受けたのです。


だから、みなさん。
もしも、今、自分の絵画が、いったい世界のどの場所にあるのか知りたいと思ったら、
どうぞ、人生の中のたった1日でもいいから、その時間を現代アートのメッカであるNYという街で費やしてみて、街角でも、地下鉄の中でも、貴方のポートフォーリオを開いてみてみませんか。
きっと次の瞬間に、
何か、これまでには味わったことのないような手応えを感じるかもしれません。
貴方のアートが、
言葉や人種を超えて、これまで一度も話したことのない人たちに向かって
まっすぐに語りかけてゆきます。
日本のコンペの結果や、文化庁のジャッジよりも、もっと違う何か、
貴方の絵そのものの、「波動の強さ」みたいなものを
それを伝えてくれる世界の人たちによって、貴方は実感することでしょう。


人間は伝え合わなければいけません。
私たちはそうやって成長して行く生き物なのだと思います。
だから、今日も。
貴方の想いを、私の気持ちを。
このキャンバスで、この色で、言葉で、様々な形で
表現してゆきましょう。

世界は情報過多なのに、
コミュニケーション不足で戦いに陥っているのです。
メディアが思考を操作しようとするから、人々はなお混乱します。
でも、アートは心に語りかけるものです。

政治や経済にできないことでも

アートなら
そんな世界を変えられるかもしれないーと、
私は信じています。





「アートには、それができると信じて」

Minako 2006


※バックナンバー↓
MINAKOのNYダイアリー

『はじめまして、MINAKOです。―作品集の考え方―』No.001
『NYの OPEN STUDIO』No.002
『NYの OPEN STUDIO その2』No.003
『ART BASEL in Miami Beach/世界へのアプローチ』No.004
『NYアートの洗礼』No.005
『ニューヨークアートを体験しませんか?』No.006
『NYアート留学体験参加者募集』No.007
『黒姫受賞とNYアート体験一期生』No.008
『NY流お絵描きワークショップ&サマーパーティ in 東京!のご案内』No.009
『2006/12/7 NY直輸入吉野美奈子石彫刻展(12/17~12/23)&
絵画とダンスコラボレーション“つらなり”&
111幻アートスクールワークショップ (12/17~23)in Tokyoのご案内』No.010

『幻の記憶(111アートスクールレポート)』No.011
『生きる場所(吉野美奈子個展公演レポート)』No.012
『夢見る人々に NEVER TOO LATE 』No.013
『アメリカ独立記念日 』No.014
『吉野美奈子制作奮闘ダイアリー』No.015
『「光のアリア」個展報告と「チェルシーのギャラリー」』No.016
『いろんなアートの形(yozgalleryとmottainainy) 』No.017

NYアート体験レポート

『NYアート体験レポート』No.001 石塚智寿 編
『NYアート体験レポート』No.002 よしだみおき 編
『NYアート体験レポート』No.003 加藤健太郎 編
『NYアート体験レポート』No.004 上原和江 編
『NYアート体験レポート』No.005 庄司 純 編




Biography

吉野美奈子 (画家・彫刻家・詩人)
ニューヨークを拠点に活動する
コンセプチュアル・ビジュアル・アーティスト。
吉野美奈子official website
吉野美奈子blog
2001年 渡米。 一貫して「大いなる愛・宇宙的生命のつながり」をテーマに作品を発表。絵画・彫刻ともに作風は、有機的かつ霊的。建築、音楽、舞踊をはじめ様々なアーティストのインスピレーションとなりコラボレーションに参加、その活動はNYタイムズでもとりあげられる。日本、米国をはじめ世界の各地で作品を発表。
2004年6月、米国最古の彫刻協会ナショナル・スカルプチャー・ソサエティーより 「平和のためのシリーズ」にて新人賞奨学金を受賞。
2005年3月、NY国連NGOアースソサエティ表彰式にて、舞踊家佐藤道代ととも に吉野の絵画に基づくアートプレゼンテーション「アース&ヒューマニティ」を発表。地球保護に関わる世界の知識人より喝采をあびる。
2006年黒大理石の代表作「Awaken(目覚め)」通称黒姫により、全米女性作家協会より日本人女性彫刻家として初の名誉賞を受賞。

卓越した技による独自の世界観の徹底した表現と、多方面での活躍に、NYメトロポリタン美術館、国連エクジビション部、全米具象彫刻協会、NYマルボロギャラリー、NYアートマガジン、NY市建設部等より高い推薦状を受けている。




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