『NYアート体験レポート』 No.002
よしだみおき 編

Lupinas Art Network × Studio M共同企画
「NEW YORK アート体験コーディネイション」に参加して


 今、私は使い慣れた自分の机にすわっていて、まだちょっと時差ぼけで、身体の 芯がふわふわしてて、へんな感じ。初めて行ったNY、出逢った人、食べたもの 、地下鉄、リーグの教室、同じクラスの人達。ほんの何日か前まではすぐそばに あったものたち。

うまく言えないのだけど、私の人生に今まで無かった要素がたくさん入った。

船は大きく進路を変えたような気がする。

さっきからNYであったこと、その前のこと、なんで絵を描きたかったかってこ とをレポートにしようと思っているのだけれど 何度も書いては消して。だから いったん自分の気持ちだけを書いてみようと思って書いているのだけれど、これ さえも変だったらすみません★

リーグは初めて建物の中に入ったときから知ってる場所のような気がして、なん だろう?夢で行ったことのあるような懐かしいような、不思議な気持ちがした。 古くて、大きくて、とても落ち着くところ。学校が、建物が、先生みたい。

私がとった授業はドローイングとウォ−タ−カラーペインティング、8回ずつ。 デッサンのことをドローイングっていうの知らなくて、青くなって美奈子さんに メールした。デッサンのクラスがHPのどこをみてもない、描きたいのに!
焦った、、、
そんな初歩的以前のことも美奈子さんは、普通に教えてくれた。私は知らないこ とを恥ずかしいと思ったけれど、美奈子さんは思わなかったから、なんか私も恥 ずかしくなくなった。

私の一番大切なものは?家族と絵、それらと共にいる時間。
どうしてどっちか選ばなければいけないと思っていたのだろう?
誰にも言われてないのに。
勝手に葛藤してた。

絵だけ描く人生なんて甘い!とか、NY?アートスクール?大それているのじゃ ない?とか。夢の夢!とか。いつかできたらいいね!とか。
そんなんじゃいったい誰の為の人生なの?

今の日本、いくらお金がないって言っても、何十万かが用意できないってことは ないと思う。携帯電話を解約して、通勤を原付バイクにする、自転車にする。そ んな簡単なことで何十万かが、たったの1年で貯められる。
これはあくまでも例えで、ほんとにやりたいことのために、あんまり必要無いも のは1年ぐらいお休みしてもいいかなって思う。意外とどうでもいいことにお金 を使ってたりする。

年齢にしても、私は今31歳なのだけど、こんなに若くても、なぜかもう遅い、 もう今さら、なんて声がする。実際「がけっぷち」とか言われてたりもする。

リーグでは、おじいさん、おばあさん、足の悪い人、すごく若い子、まさにニュ ーヨ−カーみたいな人、ほんと様々で、みんなアートが好きで、やりたかったら やらない理由ってないんじゃないかなって素直に思えた。
初めてのことは怖くてあたりまえで、でも進んでいくと曲り角の先は花畑だった ってう感じ。実際嫌なこと、嫌な思いって一回もしなかった。

自分の無能さ、できることの少なさにびっくりもしたけれど、反省ってその気持 ちの中にどっぷり浸かることじゃなくて そこから一枚カードを拾ってまた暮ら しに戻る感じだなって考え直した。NYだからかな?くよくよし続けるほうが不 可能。

子供を連れて歩くマンハッタンは意外と普通で、人は人が好きなんだなと声をか けてくる人をみて感じた。

そう、私は、4歳の子供を連れて行ったのだけれど、実は子供に連れて行かれた ところもあるかな、と思う。魂のレベルではそうだったのかな?って思う。

それを感じたのは、2回。一度目はチェルシーでの個展のオープニングパーティ で、娘がじっと絵をみた後、裏の方で、とても親切な韓国人のア−ティストに水 彩絵の具を使わせてもらって、お絵描きをさせてもらったとき。
初めてとは思えない筆の使い方、周りに人が集まってきても気にせず ふざけず 絵の中に入って描いてた。なにかが彼女の中で芽生えたような気がした。

二度めは帰りの飛行機の中。私たちは、ロッキー山脈をドキドキしながらすごい !なんて言って見下ろしてたのだけど、その時、親子っていう関係を一瞬忘れて 、一緒に感動しているふたつの魂だなって思った。そしてその感じは懐かしい知 っているような感じだった。

メトロポリタン美術館では、神様のことを考えた。彫刻達はこの世のものではな いみたいに自然光の下でくつろいで憩っていた。夜はみんな帰った後、動いてる に違いないと思うぐらい、生きていた。
絵も。クレーの絵は小学校の放課後そのもので、今思い出しても泣けてくる。
私しか知らないはずの教室の夕陽をどうして知ってるの?
どうしてそこまで一緒に来れるの?
そこで起きた、私ですら忘れているようなことを絵が私に話してくれた。

絵が、時間や言葉を超えるのを、ほんとに見ちゃった。絵も生きてる。シャワー みたいにメッセージや、ほんとのことを放ち続けてる。今まで知らなかった。
深く問われたり、許されたり、悲しみを替わってくれたり、ただそこにいたり。
アートは私たちの本質を、見えないものを見えるものにして、分け与え続ける。
そのバイブレーションは、その場や人を浄める。 
本物ってすごい!毎日来たいって思った。

美奈子さんはたらたら泣き続ける私をくるくる案内してくれて、そこがまた、泣 けてしかたがないようなところばかりだったので、たくさん涙を見られてしまっ た。すこしはずかしかった。
自然に案内してくれていたけれど、かなり考え抜かれたルートだったと思う。 
見終わった後、私の中に道が出来た。今も思い出せば歩けるすてきな道。

日本の私がいるようなところだと、なぜか本物はなかなか観れない、芸術様って 感じで、なかなか素朴なこころで、ふと、みるってことがない。なかなか親しめ ない。人の方で垣根をつくって見えづらくしている。そのことに気づいた。

ドローイングの授業はまた何度でもうけたいほど!あんなに集中して絵を描いた ことない。1分のポーズを何回か描いて、次は5分。
1分の後の5分の長いこと!
1分が長かったり短かったり、線を追いかけて描けても描けなくてもベストを尽 くして、3時間はあっという間。
後百回でも描きたかった!

また行けることがあったら、もし行けたら、私が何歳でも また受けたい。

本物、と言えるアートに触れて、
その後、すぐ集中して創作、もしくは学ぶ場がある。

街を歩いてても絵を描いていることは普通だし、メトロポリタンでドローイング している子供や大人もたくさんいる。触れて、自分もやってみるってことがとっ ても自然。生活とアートが分れていない。この違いって大きいと思う。

もしこのレポートを読んでくれる人がいて、もし、行きたいな、観てみたいな、 と思ってくれたら、その人は絶対行けると思う。

自分でいうのもなんだけど、私はピカピカの貧乏だし、英語もほとんど話せない 。方向音痴でもあるし、海外自体ほとんど行ったことがなく、時差?ってなに? と理解できなくて、なぜ出発した日と同じ日に着くのか!?とびっくりした。
私がなんとか行って帰って来れたのは、みんなのおかげとしか言いようがない。

年も関係ない、お金も問題ない、必要なら、きっと助けがどこからかやってくる 。この私が行けたのだから、あなたはもっと軽やかに行ける!

2週間はとっても短いと思ったけれど、そのなかにキラキラ光る瞬間がたくさん 入ってて、学校で絵を描いている時、幸せで、ほんとに泣けてきて困ったりした 。経済的にも体力的にも重くはあったが、大好きな娘と一緒に行けてよかった。 彼女のキラキラしてるところも見れてよかった。

美奈子さんは自分の創作の時間を削って、貴重なお話をしてくれたり、作品を見 せて下さったりした。プライベートな空間で見る彫刻は、さらに無防備な状態で 観るからか、胸にしみるようだった。空間のいちばん上まで奇麗にしてしまう、 力強いのにさり気なくそこにあって、目に入ってくると奇麗な気持ちになる。も し家にあったら、なんども気持ちが浄められて、素晴しいだろうなって思う。

アートは、本物の力は、何度でも人を生まれたての気持ちにするのだと思う。
人生は私が思ってるよりずっと長くて、何度も新しい気持ちになったり、初めて の気持ちになったりすることは、必要で大切なことだと強く思った。まっさらに なった所へすてきなものを入れて、いくらでも人生を豊かにしよう!

アートってほんとにほんとにすごい、そのことが解ってよかった。
人や作品や街にいくら感謝してもしたりないほど!
もう何回も言っちゃったけど、 でも やっぱりありがとうだ。
美奈子さん、NY、数々の作品達、出逢ったみんな、家族。 
ほんとに、ほんとに、ありがとう!! 
次に行くあなたにも、たくさんの愛を!

よしだみおき



 みおきちゃんから、はじめにメールで連絡をもらったとき、彼女はいろいろなことがしたくて、粘土も版画もなんでもやってみたい! という希望だったのだけど、実際のリーグに来られる日数が9日間という期間であったため、その現実的な問題を私は説明していった。 そして、私は彼女に確かな手応えをつかんでほしいと思ったので、基本であるドローイングにフォーカスして話をした。 9日間でも集中して描けば最後の1日目は初日とは比べ物にならないほど描けるようになると断言した。
 みおきちゃんとメールの交換をしているときからすでに、きっと彼女はそれをつかむだろうと私には確信できた。 不思議なことに、みんながNYから何をもらって帰るのか、私にはなんとなく見える。きっと自分も歩いた道だからだろう。
 初めて出会ったリーグの同じロビーで、最後の日の午後、彼女を抱きしめた。彼女は子供のように泣きじゃくってずっと「ありがとう」と言い続けた。 大丈夫。これが最後じゃない。貴女が描き続けていれば、私たちがこの愛するアートの世界にいれば、 命は必ずまたシンクロする。
親子でよくがんばったね!Congratulation!

吉野美奈子


*NYアート体験コーディネーションの2006年春の受付は終了 しました。
 次回の受付は2006年9月、10月のみとなります。
ご予定の方はお早めに詳細をお問い合わせ、お申し込みください。

「NYアート体験コーディネーション」に関するお問い合わせは
ルピナスアートネットワーク  大石までinfo@lupinasartnetwork.com





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Biography

吉野美奈子 (画家・彫刻家・詩人)
ニューヨークを拠点に活動する
コンセプチュアル・ビジュアル・アーティスト。
吉野美奈子official website
吉野美奈子blog
2001年 渡米。 一貫して「大いなる愛・宇宙的生命のつながり」をテーマに作品を発表。絵画・彫刻ともに作風は、有機的かつ霊的。建築、音楽、舞踊をはじめ様々なアーティストのインスピレーションとなりコラボレーションに参加、その活動はNYタイムズでもとりあげられる。日本、米国をはじめ世界の各地で作品を発表。
2004年6月、米国最古の彫刻協会ナショナル・スカルプチャー・ソサエティーより 「平和のためのシリーズ」にて新人賞奨学金を受賞。
2005年3月、NY国連NGOアースソサエティ表彰式にて、舞踊家佐藤道代ととも に吉野の絵画に基づくアートプレゼンテーション「アース&ヒューマニティ」を発表。地球保護に関わる世界の知識人より喝采をあびる。
2006年黒大理石の代表作「Awaken(目覚め)」通称黒姫により、全米女性作家協会より日本人女性彫刻家として初の名誉賞を受賞。

卓越した技による独自の世界観の徹底した表現と、多方面での活躍に、NYメトロポリタン美術館、国連エクジビション部、全米具象彫刻協会、NYマルボロギャラリー、NYアートマガジン、NY市建設部等より高い推薦状を受けている。




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